secret ページ45
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__俺には、確かに"愛している人"がいた。
『ゾムさん…まさか、こんな寝癖をつけたまま…戦地へと向かうおつもりですか?』
「んふふ、出発前やけどAにセットしてもらいたくて!髪型だけそのままにしとった!」
彼女は、態とそのままにしていた寝癖に気付き
手慣れた手つきで、四方八方に飛ぶ俺の髪を梳かす。
これから、自分は戦場へと向かうが
今日も、いつもの朝と何一つ変わらない空気だ。
「実はちょっと寝坊して、朝からトントンに怒られてもうた。」
『…トントンさんが、心配していた姿が思い浮かびますよ。』
「朝ごはんは、お腹がはち切れるまでた〜っくさん!食べて来た!!」
『何よりです。この後のエネルギーになります。』
相変わらず、今日も下らない話の数々だ。
それでも彼女と話す時間が嬉しくて、何より大切な時間で
終わらないで欲しいと、そう…いつも思っていた。
「……なぁ、A?」
『………っ、はい。何でしょうか?』
少し驚きはした、いつも生真面目で冷静な
ブラシを持つ彼女の手も声も、震えているのだから。
なんて言葉を彼女に向けたらいいのかも
正直言えば分からなかった。
それでも、自分は絶対に彼女の元へ帰ってくる
信じて待っていて欲しいと、これだけは伝えたいと。
「…忘れとるかもやけど、俺…こう見えてもこの国の幹部やで?…特に、これから向かう戦場地では、な?」
「Aは、俺の専属メイドやろ。そこだけは1番に信頼して欲しいんやけどなぁ…。」
苦笑いやったと思う、彼女に向けた顔はきっと
自分の口から"幹部"という言葉を出すなんて
…なんか、凄く慣れへんしな。
『っ…申し訳ありません…ゾムさん。』
『…でも、どうしても。貴方に"行かないで"と言う気持ちが………っ、本当に申し訳ありません。』
あぁ、そうか…まさかな。
彼女に、"行かないで"そう言われるくらいなら
幹部なんて…ましてや兵士なんて
心底ほんまに、ならなければ良かったと思った。
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「ゾム、お前はもう兵士に戻らなくてええんよ。怪我も治ってないんやから。」
「嫌や、俺は戻るで。」
「だって、世界が平和になれば、世界中の人が彼女の視力を治す為に力を貸してくれるかもしれないやろ?」
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HiNaTa/ひなた - あれ?目からバブルのたきが〜))…うわーンあ一わ一んうえ−ん (3月31日 8時) (レス) @page44 id: 46cf81a59e (このIDを非表示/違反報告)
さくさく日記(プロフ) - 初めましてさくさく日記と申します。完結おめでとうございます。今日こちらの作品を見つけまして最後まで通しで閲覧させて頂きました。物語の構成もですがそれぞれの人物の心理描写や流れがとても素敵で泣いてしまいました。本当に素敵な作品をありがとうございました。 (3月21日 22時) (レス) @page44 id: fce70f8179 (このIDを非表示/違反報告)
あずは(プロフ) - 号泣してしまいました😭素敵すぎます、!! (3月17日 22時) (レス) @page44 id: 0a871c975d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:riyana | 作成日時:2024年2月29日 19時