#03 ページ3
.
「分かりやす過ぎるよー」
言うと、ポキくんは照れくさそうにはにかんだ。
……ああ、何だか心がくすぐったい。
「いいな。 羨ましい」
気づけばそう口にしていた。
好きな人がいる、っていいな。
私も、小学生くらいのときにはいたものだけれど、おままごとの延長みたいなものだった。
ただ、誰々が好きなんだ、って言うのが楽しいだけの、恋とも呼べないものだった。
「付き合ってるとかじゃないんだよ?
あんまり話したこともなかったし……片想いだし」
「そうなの? それなら、もっと積極的に話しかけたりしてみたら?」
なんて偉そうにアドバイス出来る立場でもないけれど、こんな会話してみたかった。
女友達さえまともにいない私には、恋話なんて縁遠いものだと思っていた。
今までそれほど関わりのなかった彼と、こんな話をするなんて思いもしなかった。
「でも、迷惑じゃないかな?」
「何で? 私だったら凄く嬉しいけどな」
私だったら。
皆がよそよそしい中、話しかけてきてくれたら舞い上がりそう。
ポキくんは少し驚いたような表情を浮かべ、そしてふっと頬を緩めた。
「……そっか。 うん、じゃあ積極的に話しかけてみる」
そう言った彼に笑顔を向けて「うん」と頷く。
と、バス停が見えてきた。
いつも一人で帰るときはバス停で少し待つのに、今日はもうバスが来ている。
今日はバスが早かったんだ、なんて思ったけれどそれは間違いだった。
バスが早いんじゃなくて、私が遅かったんだ。
……そっか、誰かと帰るとこういうこともあるんだ。
二人でのバス停までの道のりはあっという間だったのに、不思議だ。
でも、とても心地良い。
バスはいつも通り、がらがらに空いていた。
いつもは車両の前の方の、少し高くなっている一人席に座るのだけれど今日は二人だ。
とはいえ二人掛けの席は距離が近過ぎるから、一番後ろの席に座ることにした。
バスが緩やかに走り出す。
いくつかのバス停を通過した。
「ポキくん、いつもこのバス?」
「そうだよー」
「朝も?」
「うん」
そっか。 全然気づかなかった。
一人でバスに乗るときは大抵、窓の外を眺めているからか。
「知らなかった、って感じだね」
ひっそりとポキくんが笑う。
何だか申し訳なかった。
.
113人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時