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♢
「二人ってさ、付き合ってるの?」
心臓がドキドキした。
そんなわけないじゃん、って言われるのを黙って待つ。
……でも。
二人は顔を見合わせ、笑った。
あれ? 思ってたリアクションと違う。
ここから否定の言葉が続くとは思えない。
嫌な予感がする。
聞かなければ良かったと後悔すら覚えるほど。
「うん。 実は、ね」
なんて言うれんに「ね」と頷くA。
頭が真っ白になる。
れん、今「うん」って言ったよな?
どういうことだ……?
胸の奥がざわざわする。
そこから立ち込める黒い霧に、全身が包まれていくような感覚。
まだ、状況が飲み込めない。
二人の言葉を消化出来ない。
「嘘だ……」
「うん、嘘」
「えっ?」
思わずこぼれた呟きに、れんは先ほどと変わらぬ調子で頷いた。
「付き合ってないよ」
そう答えたのはAだった。
途端に目の前の霧が晴れていく。
「昔からよく言われるから、聞かれたら毎回こうやってふざけるよね」
れんがイタズラっぽく笑う。
Aも「本当よく言われる」と笑った。
ホッとした、なんてもんじゃないくらい安堵して、一気に力が抜ける。
「はぁぁ、良かったぁ……」
掠れた声で呟いて、その場にしゃがみ込んだ。
もう、心臓止まるかと思った。
冗談にしたって、ひどいものだ。
れんは俺の気持ちも知っているくせに。
「ごめんごめん」なんて悪気なさそうに笑っちゃって。
じろりと睨んで、それからはたと思い至る。
「“昔から”?」
俺が首を傾げると、Aとれんはまたも顔を見合わせた。
「言ってなかったっけ? 俺ら、中学同じなの」
驚くと同時に、すべてが腑に落ちた気がした。
心に蓄積されていたモヤモヤが晴れていく。
だから、クラスメート以上の関係に見えたんだ。
ある意味そうだったけれど。
俺とれんは交流はあったものの中学は別だったから、知らなかったんだ。
れんも、Aと同中だってことをわざわざ言いふらすようなヤツじゃないから余計知る機会がなかった。
「そっか……、そっかぁ」
ただの思い過ごしだったことに安堵して、また思う存分彼女を好きでいて良いんだってことが嬉しくて、息をこぼすように笑った。
目に映るすべてが鮮やかに見える。
世界が煌めいて、ぜんぶが愛しく思えて。
もしこの想いに味があるなら、きっと砂糖のように甘いだろうな。 なんて。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時