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世界から一人、取り残されたみたいだ。
周りの音が遠のいて、置いてけぼりにされる。
頭の中を、煌めく何かが駆け巡った。
『────あのさ！
方向、同じだよね。 一緒に帰らない？』
あのときポキくんがそう誘ってくれなければ、きっと今一緒にはいなかったと思う。
A、って呼んでくれる君の声ぜんぶに特別な色が滲んでいるように感じて。
『だ、大丈夫？』
って、倒れかけた私の肩を支えてくれたその手の感触も温もりも、鮮やかに記憶に残っている。
至近距離での気配も、偶然触れ合った手も。
何もかもが大切で、特別で。
彼と刻んだ時間の記憶は、きらきらこぼれる光の粒。
それらは、あたたかい光を放つメリーゴーランドみたいに、語りかけては私を包み込んでくれる。
そんな粒たちを、大事に大事に小瓶にしまっておきたい。
なくさないように、忘れないように。
そして、そこからあふれる光をいつでも見られるように。
ああ、と気がつく。
そっか、この感情が……。
ずっと私が知らなかった感情。
それでもずっと憧れていたもの。
彼が、それをくれた。
気づいた。
私……ポキくんが好きなんだ────。
*
「ねぇねぇ、こんな感じでどう？ 良くない!?」
内装のダンボールから葉っぱを垂らして、裏側からガムテープで固定したものを、ポキくんが嬉しそうに見せてきた。
イメージ通りの仕上がりで、雰囲気が出ていて良かったのだけれど、直ぐには答えられなかった。
好きだと自覚した途端に、彼にどう接すれば良いのか分からなくなってしまったのだ。
ポキくんと目を合わせることにも緊張してしまう。
一瞬でも目が合うと、心臓が跳ねてばくばく鳴るし、急に照れくさくなってしまって、直ぐに逸らしてしまう。
「……うん」
かろうじて、そう小さな声で答えるのが限界だった。
彼の顔を見られないのでどんな表情をしているのか分からない。
手探りの距離感と、見えない想いの果てに戸惑うしか出来ない。
────でも、思う。
今まで、私の知らない私の内側で、その想いは着々と形成されてきていたのだと。
その『好き』の感情は、はっきりと形を持つまではじっと眠っていて、完成したら目覚めるんだ。
目覚めるきっかけは人それぞれなんだろう。
これといった出来事があるかもしれないし、あるいは時間の経過かもしれない。
いずれにしたって、好きということに変わりはない。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年9月6日 17時
