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一日、二日……と、日はあっという間に過ぎて、だんだん文化祭当日が近づいてきた。
そうなるともう3人だけで居残るということは少なく、クラスのほとんどが残って準備を進める日が多くなった。
クラスメートと一緒に、後回しにしていた外装の作業をしながら、ふと教室の中で装飾の作業をしているAに目をやる。
……最近ちょっと、彼女と距離が出来てしまった。
俺が何かしたのかと色々考えてみても何も思い当たることはない。
突然、Aの態度が変わってしまったんだ。
話しかけても素っ気ないし、一緒に帰ろうとしても逃げられる。
そして、笑ってくれなくなった。
……それらの変化はすべて、俺に対してだけ。
「!」
と、さすがに見つめ過ぎたのか、Aがこちらを向いた。
にこっ、と笑ってみたけれど、彼女は直ぐさま視線を逸らした。
「……」
俺、嫌われた……?
心がきゅっと縮んで、悲しくなった。
思わず俯いてしまった顔を上げ、再びAを見やる。
彼女は委員長と何やら話している様子だった。
Aが時々こぼす笑顔に、さらに胸が締め付けられる。
────なんで?
その疑問は対象が多過ぎて、最早何を問いたいのかすら分からなくなる。
とにかくその問いかけだけが頭の中を駆け巡り、答えを得られないまま居座り続けていた。
心臓が切ないリズムを刻む。
俺とAの間にある見えない透明の壁が、また分厚く、高くなった気がした。
その日の作業が全員一段落ついた頃、解散の流れになったので、俺はリュックを背負った。
まだ夕方とはいえ、窓の外は暗くなりつつある。
部活をやっていない俺には、こういうふうにちょっと遅い時間まで居残りするのが特別に感じられた。
「れんー、帰ろ」
「おー」
彼は鞄のチャックを閉めながら答える。
それを待ちながら、Aは、と振り向いた。
「Aも────」
「ごめん、今日は先帰るね」
目を合わせないまま、口早に彼女が言った。
慌てて鞄を肩にかけ、逃げるように教室を出て行ってしまう。
引き止めることはおろか「またね」とすら言えなかった。
……それに、今日“は”じゃない。 今日“も”だ。
最近のAはずっとこんな調子。
「何かあった? 喧嘩?」
ここ数日の俺たちの様子を見ていたれんが訊いてくる。
俺は黙って首を横に振った。
分からない。 もう、何も。
ただ、辛くて、痛くて……。
それでもこの想いが、Aに向いていることだけは確かなんだ。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時