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「……じゃあ、また明日」
乗ったところから5個目のバス停で、俺は言った。
膝の上に乗せていたリュックを手に取り、バスが止まったところで立ち上がる。
「あ、うん。 また明日ね!」
A、はにこやかに手を振ってくれた。
俺も同じように手を振り返す。
バスを降り、それが再び発車するまで見送ると、息をついてその場にしゃがみ込んだ。
「はー、緊張した……」
今になって心臓がばくばくと騒ぎ始める。
上手く、接せられてたかな……。
緊張していたのを読み取られていないと良いな。
とにもかくにも、Aと話すことが出来た。
それだけでもう天にも登る気分だ。
翌朝学校に着くと、教室に入り自分の席につく。
と、親友のれんがやって来た。
「どうだった?」
「上手くいった! お前天才!」
思わず緩む頬も抑えられないまま、俺は言う。
……実は、パスケースを落としたのはわざと。
わざと落として話すきっかけにしたら?と、れんがアドバイスしてくれたのだ。
「おぉー、俺天才」
上手くいったことがちょっと意外だったのか、少し驚いたように、それでも嬉しそうに笑ってくれるれん。
「しかも一緒に帰ったんだよ」
「マジで!?」
よほど衝撃だったらしく、目を丸くしている。
無理もない。
俺も、あのとき「一緒に帰らない?」なんて言った自分がまだ信じられない。
よく頑張った、って自分に言ってやりたい。
「俺の名前もちゃんと知ってくれてた」
頭の中にAの笑顔が浮かぶ。
昨日の帰りは、それを独り占め出来た。
Aは言わば、高嶺の花的な存在だ。
容姿端麗で成績優秀、みたいな。
そのうえいつも一人で行動していて、周りに人を寄せつけない。
いつも澄ました顔で何でも淡々とこなすから、性格も冷淡なのかと思われがちだけれど、そんなことはない。
彼女は本当はよく笑うし、凄く優しい子だ。
皆が「近寄りがたい」と言うのは誤解しているだけ。
────俺は、知ってる。
そんな彼女を好いている人はやっぱり多い。
男子でも、女子でも、彼女に憧れを抱く人は多いんだってことも、俺は知ってる……。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時