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#04 ページ4





「……じゃあ、また明日」

乗ったところから5個目のバス停で、俺は言った。

膝の上に乗せていたリュックを手に取り、バスが止まったところで立ち上がる。

「あ、うん。 また明日ね!」

A、はにこやかに手を振ってくれた。
俺も同じように手を振り返す。

バスを降り、それが再び発車するまで見送ると、息をついてその場にしゃがみ込んだ。

「はー、緊張した……」

今になって心臓がばくばくと騒ぎ始める。

上手く、接せられてたかな……。
緊張していたのを読み取られていないと良いな。

とにもかくにも、Aと話すことが出来た。
それだけでもう天にも登る気分だ。



翌朝学校に着くと、教室に入り自分の席につく。
と、親友のれんがやって来た。

「どうだった?」

「上手くいった! お前天才!」

思わず緩む頬も抑えられないまま、俺は言う。

……実は、パスケースを落としたのはわざと。

わざと落として話すきっかけにしたら?と、れんがアドバイスしてくれたのだ。

「おぉー、俺天才」

上手くいったことがちょっと意外だったのか、少し驚いたように、それでも嬉しそうに笑ってくれるれん。

「しかも一緒に帰ったんだよ」

「マジで!?」

よほど衝撃だったらしく、目を丸くしている。
無理もない。

俺も、あのとき「一緒に帰らない?」なんて言った自分がまだ信じられない。

よく頑張った、って自分に言ってやりたい。

「俺の名前もちゃんと知ってくれてた」

頭の中にAの笑顔が浮かぶ。
昨日の帰りは、それを独り占め出来た。



Aは言わば、高嶺の花的な存在だ。
容姿端麗で成績優秀、みたいな。

そのうえいつも一人で行動していて、周りに人を寄せつけない。

いつも澄ました顔で何でも淡々とこなすから、性格も冷淡なのかと思われがちだけれど、そんなことはない。

彼女は本当はよく笑うし、凄く優しい子だ。

皆が「近寄りがたい」と言うのは誤解しているだけ。
────俺は、知ってる。

そんな彼女を好いている人はやっぱり多い。

男子でも、女子でも、彼女に憧れを抱く人は多いんだってことも、俺は知ってる……。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時

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