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その声の主はれんくんだ。
彼は私と目が合うと、ふっと表情を緩める。
「差し入れでも買いに行こ」
私を誘う理由が分からず内心「？」と思いながらも、頷いた。
教室を出ると廊下にいたポキくんと目が合う。
彼は私とれんくんを交互に見て瞬いた。
「ちょっと行ってくるわ」
れんくんが軽い調子で言う。
ポキくんはわずかに眉を下げ、しかし普段通りに「分かった」と頷いた。
どこに、と尋ねられることもなくただただ真っ直ぐな視線を寄越される。
その意図が読めなくて、私は黙ってそれを受け止めた。
と、歩き出したれんくんの背を追う。
背後に、ポキくんと話していた女子の声がした。
「Aちゃんって、れんくんとも仲良いんだね」
ポキくんに話しかけているのだろうけれど、それにしては声のボリュームが大きくて、結構離れたはずの私にまで聞こえる。
少し棘のある皮肉めいた声色に、ぞくりと心臓が冷えた。
やっぱりあの子もポキくんのこと……。
考え至り、怯んでしまいそうになる。
それでも私の想いに偽りはなくて。
だから誰に遠慮する必要もないのに、気持ちを通すことに自信を持てなくなってしまう。
どのクラスも文化祭の準備中で、廊下は賑わっていた。
人の間を塗って歩きながら、れんくんがおもむろに口を開く。
「ポッキーと何かあった？」
相変わらずの穏やかな口調に、強張っていた心がほぐされていく。
「ないよ、何も……」
首を横に振って答える。
最近の私たちのぎこちない空気を悟って、それを聞くために私を誘い出したのかと気づいた。
「そう？ でも最近何か変じゃない？」
そんなことない、なんて的外れな返答は出来なかった。
私がポキくんを避けてしまっているのは事実だから。
「……ポッキーがさ、」
れんくんは私が黙り込んだことで質問をやめた。
根掘り葉掘り尋ねようとしないその優しさが沁みる。
「寂しがってるよ。
Aと話せないの、悲しそうだよ」
「え……」
ポキくん、そんなふうに思っててくれたの？
お門違いかもしれないけれど、嬉しくて、じわりと胸が熱くなる。
購買へと続く階段に差し掛かった。
ここは
「あのね、実は────」
れんくんの優しさに絆されてか、思わず口を開いてしまった。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年9月6日 17時
