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そして迎えた文化祭当日。
いつもより少し早起きした。

髪をゆるく巻いて高めの位置でポニーテールを作ると、その根元に白色のリボンを巻く。

鏡の中の自分を見つめて、変じゃないかな、と何度も不安になっては、大丈夫だと言い聞かせる。

少しでもポキくんに、可愛いと思われたい。
そう思って普段とは違う感じに決めてみたのだけれど、ちょっと照れくさいな。

気合い入れすぎだって、引かれないと良いな。

そんなふうにドキドキしながら登校して教室に行くと、れんくんと雑談していた彼が私に気づいてこちらに向かってきた。

「お、おはよう」

照れ隠しのために挨拶してみるものの、彼は黙ったままだった。

しばらく私を見つめていたかと思うと、数度瞬きをして、ふいと逸らす。

あれ……?
恐れていたことが現実になったかと思い、内心ひやりとした。

けれど、そうではなかった。

「ちょっと待って」

ポキくんが小さく言う。
マスクの代わりに手で口元と鼻を覆い隠した。

「か、かわいすぎん……?」

消え入りそうな声だったけれどはっきりと聞き取れた。
彼の頬が赤く染まっていくのが分かる。

そんなに照れられると、私まで恥ずかしい。
照れながらでもちゃんと褒めてくれたことが嬉しくて、鼓動が加速した。

「ピュアやなー」

ほんと純愛、とれんくんが冷やかしてきた。
もっと恥ずかしくなってきて顔が熱い。

ちらりとポキくんを見上げれば、照れたままの彼と目が合った。 心臓が跳ねる。

「ああもう!」

ポキくんが、そんな上気した空気を振り払うように言って、私に手を差し伸べた。

「行こ」

少し筋張った長い指と掌を見つめ、照れくささは倍増したけれどそれよりも嬉しかった。

「うん……!」

この手を、迷いなく取れること。
彼の手に自分の手を重ねると、優しく包み込まれた。
その温もりがまた嬉しくて、幸せで────。



「とりあえず楽しみまくろ!」

廊下を歩きながら彼が笑顔を咲かせる。

午前はクラスの方のシフトも入っていないし、午後の1時間は、気を利かせてくれたクラスの誰かが私とポキくんのシフトを同じにしてくれた。

「どこ行く?」

「ポキくんと一緒なら、どこでも」

「……何それ、照れる」

二人同時にはにかみ笑った。
さらさら甘い穏やかな時間が流れる。

これから先、きっと恥ずかしいところや情けないところも見せてしまうだろう。

でも、どうか。
きみと歩幅を合わせて歩いていけたら、と思う。
それだけでずっと、幸せだから。






─Fin─

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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時

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