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#06 ページ6





クラスメートたちは各々雑談を交わしたり何かしらをする傍ら、Aの方に興味を引かれているように見える。

Aが俺と話していることを不思議がるような視線。

当然だと思う。
一匹狼の彼女が突然、俺なんかと会話してるんだから。

それに、昨日の帰りの出来事を、れん以外は知らないし。

いくつもの好奇と羨望の眼差しに捕らえられ、居心地が悪い。

でも、ここを離れたくない。Aの近くにいたい。

束の間でも彼女を独り占め出来る優越感を胸に、クラスメートたちにドヤ顔してみたくなった。



「ポキくんって、部活やってるっけ?」

「ううん、帰宅部」

俺は首を横に振って答える。

「そうなんだ。 じゃあ私と同じだね」

ふふ、と笑うA。
わけもなく俺もつられて笑った。

「帰ったら何するの?」

ちょっと気になって訊いてみた。
彼女は帰っても勉強とか読書とかしてそうなイメージだ。

一拍置いてAは答える。

「ゲームかなぁ」

「え! めっちゃ意外」

思わず素っ頓狂な声が出た。
予想外過ぎて、冗談かと思ってしまう。

「そう?」

彼女は笑って首を傾げていた。
どうやら、嘘ではないらしい。
親近感が湧いて嬉しくなる。

「俺もゲームめちゃくちゃ好きなんだよね」

言うと、ぱぁっと嬉しそうにAの表情が咲く。

「私も好き!」

「……!」

わずかに目を見張った。
落ち着いていた鼓動がまた騒ぎ始める。

その『好き』の対象は俺じゃないって頭では理解している。
でも、勘違いした心臓は煩くなるばかり。



……と、チャイムが鳴った。

そのタイミングの良さに少し安堵しながら息をつく。

俺は立ち上がると、緊張と戸惑いを悟られないようにAを見た。

「じゃあ」

言うと、彼女は頷いた。

「またねー」

俺の内心を知る由もないAは、にこにこしながら手を振る。

もっと鼓動が加速しそうで、俺は慌てて視線を逸らすと自分の席に戻った。



「どうした?」

俺の席の前がれんの席。彼は振り向き問うてきた。

「珍しく積極的じゃん」

俺は火照りを冷ますように頬に手を当てながら答える。

「Aが、話しかけてくれたら嬉しい、って」

「えー、おまえに?」

「そうだよ!」

ちょっとムキになって食い気味に言う。
れんは楽しそうにけらけら笑っていた。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時

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