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#08 ページ8

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ホームルームが終わり、皆が席を立っていく。

帰る準備をしている人、部活に行く人、さまざまだ。

私は委員長から受け取ったメモを丁寧に畳んでスカートのポケットにしまい、お金の入った封筒は鞄の中にそっと入れた。

「ありがとね、A」

帰り際、委員長がわざわざもう一度礼を言ってくれた。

「全然! 気にしないで」

気づいたら笑顔が浮かんでいた。

誰かに感謝されるために手を挙げたわけではないのだけれど、そう言われると、やっぱり嬉しい。

委員長と別れ、鞄を肩にかけると教室を出る。

どこに行こう……。
近くのショッピングモールにしようかな。

なんて考えていると、背後から誰かが駆けてくる足音が聞こえた。



「A!」

反射的に振り向くと、ポキくんがいた。

「どうかした?」

尋ねると、彼は逡巡するように視線を落とし、それから勢いよく顔を上げる。

「買い出し、俺も行く」

「えっ?」

思わぬ言葉に目を見張った。
最近────昨日から、彼には色々と驚かされる。

今朝も、私に話しかけてくれたことでどんなに驚かされたか。

そして……どんなに嬉しかったことか。



「あ、あの、嫌だったらごめん! 本当に」

しばらく私が黙り込んだことで、その無言の意味を勘違いしたらしいポキくんが慌てて言った。

私は首を横に振る。

「違うの。 ……本当に嬉しくて」

ポキくんが、私に話しかけてくれることが。

今まで誰とも深く関わることの出来なかった私を、気にかけてくれることが。

「ありがとう」

笑ってみせると、彼は少し目を見開いて、それから俯いてしまった。



「あ、そうだ。 買い出し」

私はしまったメモを取り出す。

二人で小さい紙を覗き込むと、いつもより近くにいるポキくんの気配で、心がちょっと落ち着かない。

洗剤の爽やかなにおいも相まって、距離感に戸惑ってしまう。



「“造花 大量に”って、雑過ぎない?」

ポキくんがメモに書かれた文章を見て吹き出す。

そこで、はっと意識が現実に戻った。

「ね!」

私もその文を目で追い、改めてメモを見る。

「この“リメイクシート 良い感じになるくらい”とかも」

私はメモの文を指して笑い、彼を見やる。

顔を上げたら、鼻先が触れそうなほど近くで目が合って、お互いに固まってしまった。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時

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