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「あっ、ごめん、ね」
「うん、いや俺の方こそ……!」
反射的に身を退いた。
彼も同じようにして、顎まで下げていたマスクを鼻を覆うまで上げる。
何故か少し、心音が大きく速く鳴っている気がして、そのせいで頬が熱い。
こんなに戸惑うなんて恥ずかしい……。
動揺が伝わっていないか、とポキくんの方を見ると、マスクの隙間から覗く彼の白い頬も、わずかに色づいて見えた。
びっくりした。 私の心臓と頬がおかしいのかと思った。
「……」
ポキくんも、心臓がドキドキしていたりするのかな。
────なんて。
収めるように深呼吸すると鞄を肩にかけ直す。
「じゃあ……、行こっか」
どこかふわふわとした柔らかい空気に包まれながら言う。
ポキくんはこくこくと頷いた。
*
ショッピングモールは学校から歩いて10分ほどの所にある。
私たちはそこへ到着すると、まず百均へ向かうことにした。
「“造花 大量に”って、どんなのが良いのかな」
造花の陳列棚を見て呟く。
ポキくんは「んー」と適当に花に触れてみたりして考えている様子。
「あ、こういうのじゃない?」
彼が手に取ったのは花ではなく葉だった。
ツタのようにくるくるしている葉っぱのフェイクグリーンだ。
「いいね、それ! カフェっぽい」
私はそれを彼から受け取ると笑って言う。
「勝手なイメージだけど、こういう葉っぱにレンガって感じがする」
「分かる分かる! それと深緑のパラソル、みたいな」
私とポキくんの中の『カフェ』のイメージは、どうやらかなり近い……というか同じかも?
そんな小さな事実が面白くて、嬉しくて、少しの間お互いに笑い合っていた。
カゴの中にツタのようなフェイクグリーンを、そこにあるだけ入れていく。
彼は何も言わずにカゴを持ってくれていた。
こういうところはやっぱり、男子って感じがする。
「次はリメイクシートだね」
インテリアのコーナーに移動する。
リメイクシートは色々な種類のものが売られていた。
木目の柄、タイルの柄、レンガの柄などなど。
ポキくんはその中から赤っぽい色のレンガ柄のものを手に取り、こちらを向いて首を傾げる。
私は気づかぬうちに笑顔を浮かべて、そして頷いた。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時