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リメイクシートも造花と同じように、なるべくたくさんカゴに入れていく。
「よし。 次は?」
ポキくんが私の手にあるメモを覗き込む。
距離が近づいても、先ほどよりも戸惑いはしなかった。
よし、少し慣れてきた……。
メモにある文章を目で追って、
「え?」
「えぇ!」
思わず二人して声を上げる。
「“あとは独断と偏見にお任せします”って」
委員長の文字を読み上げて彼を見やる。
「委員長、途中で面倒くさくなってんじゃん」
ポキくんが笑った。 私もつられて笑う。
それから店内を見回した。
どんなものが良いのか物色するために。
「カフェって言ったらやっぱり、黒板だよね」
「黒板にメニュー書いてあるやつね」
やっぱり私と彼のイメージは同じだ。
「でもそれは学校にあるやつ使えばいいかなぁ」
「そっかー。……あ、でも立て看板に出来そう!」
ぱっと閃いた様子のポキくんが、並んでいたA4サイズくらいの黒板を手に取って言った。
「あー!それいいね! 教室の前に置いておく用に!」
彼の意見に賛同すると、ポキくんは嬉しそうに笑って「じゃあ」と黒板をカゴに入れた。
木のイーゼルも同じように放り込んでおく。
「あとは紙コップと紙皿とかかな?」
というような調子で、柄の入った紙コップと紙皿、それから『深緑のパラソル』の代わりに深緑のテーブルクロスも買うことにした。
会計を済ませると袋を手分けして持つ。
ここでも彼は重い方の袋を持ってくれて、その自然な優しさが純粋に嬉しかった。
ここで予算の4分の1強を使った。
残りは材料の不足分を買い足すのと、食べ物や飲み物を買うのに充てることにする。
「戻ろっか」
「戻ろー」
学校までの道を二人で引き返す。
その間の時間も、昨日のポキくんとのバス停までの道のりと同じように、とても短く感じられた。
濃いオレンジ色の光が射す教室には、私たちの他に誰もいなかった。
「とりあえず、買ったものロッカーに入れとこうかな」
ポキくんから袋を受け取り、自分で持っていたものと合わせて私のロッカーに入れておく。
「明日から居残って準備するのかな」
「たぶん……。 委員長に聞いてみないとだけど」
そんな調子で、今日は切り上げた。
昨日と同じように彼とともにバス停へ向かい、一緒に乗車した。
彼といる時間はとても穏やかで、春の陽だまりのようだった。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時