【d!】画面越しの愛してる【短編集】 (ページ11)

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線香上がる、彼の花＿sha ページ11

※死ネタ

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sha side

ギラギラと日差しが肌を焼く。麦わらの帽子を被っていても、熱されたコンクリートに焼かれた空気が目に入って痛かった。

カサリ、花束が揺れて音を立てる。黄色の向日葵が俺を覗いた。それを恨めしそうに睨む。向日葵はそっぽを向いた。

＿なんか、お盆って不思議なもんやな。唐突に泣きたくなってきたわ。

水桶に水をたっぷりと汲んで、ゆっくりと歩く。水面に映る明るい日光が、なんとなく何かに見えた気がしたが、俺には何も見えなかった。

ズラリと並ぶお墓の列に1つ。Aの名前が書かれた墓石の前に立った。少しばかりの雑草が生え、埃を被っている。

雑草を抜いて、埃を水で洗い流す。水を被って艶々と光りだした墓石が美しく見えて、不謹慎なもんやと自戒した。

花束から花を抜く。揺れる黄色の向日葵を脇の花立に活ける。お墓参りで活けるような花ではないことを理解しているが、どうしてもこれを飾りたかったんや。

シャオちゃんの色！と向日葵を見かける度に言っていたもんやから、あいつが何も言わなくても「ああ、俺の花やん」なんて思うようになってしまった。

我ながら馬鹿や。毒されてんなあ。

水鉢に水を汲む。線香に火をつけて香炉に置く。独特の匂いが鼻を掠めて、隣にAがいないことを実感した。

それと同時に、哀しくなった。隣に温度を感じないことに。あいつの声が聞けないことに。笑顔が見れないことに。

声はもう、とっくに忘れてもうてるけど。

ああ、忘れたくなかったんに。

涙が落ちた。向日葵が揺れた。けれども風は無かった。

【哀愁(あいしゅう)】

・寂しくもの悲しい気持ち。もの悲しさ。