【d!】画面越しの愛してる【短編集】 (ページ14)

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雨って、＿tn ページ14

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『あたし、雨って嫌いやねんな』

クッションでくったりとしている彼女がぼそりと呟く。

湿気のせいで地味に蒸し暑いこの部屋には、既にエアコンが効いていて涼しい。だが水分を吸い込んだ体はぺたぺたしていて鬱陶しい。

エアコンが風を吹き出すゴオーッという音に、Aの声はかき消されてしまいそうなほど小さかった。

『久しぶりにトントンと会えたんにデートもさせてくれんなんて、酷い』

ぶすくれたように吐き出した。

薄暗い空と薄暗い部屋。互いを照らすスマホのライトしか明かりがない。

『ただでさえ仕事で忙しくて、付き合ってるのに頻繁に会えなくて、電話越しの会話しか出来ないの』

Aは仕事人間。今を生きるバリバリのキャリアウーマンで、仕事にしか興味が無かった彼女と付き合えたのは奇跡に近い。

仕事場でテキパキと動き、有能とされる彼女が、俺のそばではこうして甘えている。なんと可愛らしいことか。

『ねえ、トントンはどう思う？』

「せやなあ。…俺も雨は嫌いやんな」

『そうだよね。雨の音は好きやけど、出かけられないのはちょっと』

嫌だよねえ、と髪をくるくるしだす。彼女の口から愚痴が出てくるのも、少し珍しい。

『… イライラしてきてもうてるなあ。なあトントン、一緒にゲームしようぜ』

眉間に皺を寄せたあとぱっと起き上がり、ゲーム機を手に取った。浮かない顔ではあるものの、さっきよりはまだいい顔をしている。

「ええで。何しよか」

『協力ゲームがええなあ。そしたら…』

カセットを漁っているAは結構楽しそうやったな。

【苛立ち(いらだち)】

・思うようにならず気持ちが高ぶること。いらいらする気持ち。