【d!】画面越しの愛してる【短編集】 (ページ5)

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酔い冷め＿syp ページ5

A side

分かってた。

私とショッピくんが付き合えただけでも奇跡のようなもんで、それからさらに手を繋ぐとか、キスをするとか… 夢のまた夢やと思っとる。

私の家にいても、彼の家にいても。甘えベタな私が頑張って甘えてみても、逆に素っ気なくしてみても。何をしても、彼の対応は変わらず仕舞いやった。

そもそも私も彼も受け体質で、進んで甘えるとか行動を起こすとかせん。ガッチガチの甘えベタ。好きとか愛してるとかも伝えん。

これほんまに付き合っとんよな？と思うくらいに進展が無く。もはやカレカノと思っとるのは私だけな気がしてならない。

今やって、ほら…… 突然私の家に押し掛けてきたと思いきや、当然のようにソファーに居座り、スマホゲームに夢中になっている。

外は雨やった。近かったからーとかで雨宿りに使ったんやろな。

タオルとお風呂を貸して、服を貸して、体を温めるものを出しても、建前のような感謝だけで好意は伝えてくれやしない。

冷たい。

空間が、態度が、心が。

雨の音と彼のスマホゲームの音と私の心臓の音が耳に入る。ひどく無機質に聞こえて、死んでるようやった。

彼の名前を呼ぼうとしても、息を吸うだけになって言葉は溶けて消える。それを何回も繰り返した。

繰り返している内に、思い出した。彼から私を求めてくれたことはあるだろうか。無かった。何も無かった。ほんの少しの心配と気がかりだけで。

名前を呼ぶのやってどこか他人行儀で、私だけが求めている。彼はずっと敬語。私だけがタメ口で話している。

気づけば終わり。そこまでで終了。

ちょうどその時、彼のスマホからクリアの音が鳴った。「お、よっしゃあ」なんて無邪気な声を出している。

そんな声色で、私に話しかけてきてくれたことはないんやけどね。