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片付けを終えた彼が濡れた手を拭きながら席に着いた。
いただきます、と手を合わせて食べ始める。
久しぶりに食べる大好物の唐揚げ。それに、サラダ。
ホカホカの白米と、味噌汁。全て綺麗に盛り付けられている。
この短時間でここまで仕上げられるものなのか。どこまでも好きになってしまう。
頼む、神ちゃん。俺と結婚してくれ。俺のために毎日美味しい味噌汁を。
「うっまぁ。やっぱうまいわ、神ちゃん。最高や、ほんま好き。毎日作ってほしい。」
「っ、よかったぁ。」
「……え、あ、ゴメン。」
うわー!やってしまった!
心の声を思いっきり声に出してしまった。
プロポーズと捉えられてもおかしくない。しかも毎日唐揚げはさすがにハードすぎる。
神ちゃんも若干顔が引き攣っている。俺の前では笑っていてほしいのに。
押して引く作戦は、俺には無理かもしれない。
今にも泣きそうな心を何とか落ち着かせようと、お茶を流し込む。
「えっと、そんで、曲は?」
「あっ……ごめん、データ忘れた。」
「……もう、何してんねん。」
俺は詰めが甘かった。シンプルに忘れていた。
作成途中の物を持参して、ただの口実を事実にしようと思っていたのに。
家に行くだけで浮かれすぎていた。自宅で、神ちゃん家行ける!とスキップをしていた過去の俺をぶん殴りたい。
やっぱ何かやらかす思ったわ!と小瀧の声が聞こえた。俺の脳内で。
「俺に大事なとこでチョンボするとか言うけど、しげも大概やんな。」
「ぐう。」
「あ、ぐうの音出た。そういう時は出えへんのに。」
「次はギャフンって言おか?」
「ええねんそんなん。はよ食べぇ。」
まだ熱い味噌汁にフーフーと息をふきかけながら、どうしたら彼と好き合えるかを考えていた。
誇りに思ってもらえるような、余裕のある男にどうしたらなれるだろうか。
俺は君のことになるとこんなにも思考回路がグチャグチャになるというのに、なんて心の中で訴えるが、何食わぬ顔で食事をする彼を見て、やっぱり勝てないと思った。
「しげさぁ、俺ん家来たかっただけやろ。」
「え、何で?何が?」
「白状せぇ。」
「…………ギャフン。」
「はーん、図星やな。ほんま、俺のこと好きねぇ。」
メンタル四面楚歌 程々にしてください。
俺の様子を見て腹を抱えて笑う彼。
もう俺のHPはゼロだ。勝手に色々と自爆したせいでダメージを食らっていたのに。
そこから先は記憶にない。気が付いたら帰宅していた。
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かみ(プロフ) - 蒼乃碧さん» はじめまして!コメントありがとうございます^^ 初投稿なのでグダグダかもしれませんが、お時間があるときにでもまた読みに来てくださいね! (3月30日 21時) (レス) id: 39c448f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃碧(プロフ) - 初めまして!かみしげでシゲがこんなに可愛いの好きです!続き楽しみにしてます^_^ (3月29日 15時) (レス) @page3 id: d378d34ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かみ | 作成日時:2024年3月29日 8時