3 ページ28
「こんな所におったんか」
その声に、勢いよく振り向く。ショッピくんだ。不機嫌な表情を携えて、彼は私に近寄った。思わず身体を強ばらせる私に、ショッピくんは溜め息を吐いた。
「⋯⋯ランク」
『へ？』
「上がったんやけど」
ショッピくんは、何かを探るような視線を向けた。一体、何を言いたいのだろう。彼の言葉の意味を探して黙り込んでいると、ショッピくんは、さらに大きな息を一つ吐く。
「⋯⋯女子って、ランク高い男に一目置くもんちゃうん？」
『えっと、⋯⋯そう、かも⋯⋯な、何？』
「別に。てか、それ何すか？」
ショッピくんが顎で指したのは、私の手だった。正確には、私の手に握られた濡れタオルだろうか。
『⋯⋯チーノくん、汚れてたから。せめて拭くものをと思って』
ぼそぼそと答えながら、気持ち圧を込めて彼を見つめた。あの光景は部外者の私からして見ても、あまりにも酷いものだったから。
「⋯⋯チーノくん、ね」
ショッピくんが笑いを含ませながら繰り返す。瞬間、彼はぐっと私に顔を寄せた。アメジストのような紫色の瞳が、何かを探るように私を覗き込む。薄い笑みを浮かべた表情からは、感情も思考も読み取ることはできない。
『な、なに⋯⋯？』
「いやぁ、あの雑魚悪魔のこと、ほんまに気に入っとるんやなって」
身じろぎしてそれた視線は、顎を掴まれることで強制的に戻される。強引で、少し痛い。あの幼い頃の記憶が蘇ってきて、心臓が嫌な音を立てる。
『し、ショッピくんには関係な⋯⋯』
「うっさいで、生意気な口利いとんちゃうぞ」
ぴしゃりと、放たれた一言に閉口させられる。少し舌足らずで高めな声でも、その迫力は損なわれることなく、私のことを縮こまらせた。噛み締められた唇を見る彼の目が、僅かに揺れる。
「⋯⋯俺とは、目も合わそうとせんくせに」
小さな呟きは、意外なほど弱々しかった。そのちぐはぐさが私を更に混乱させる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 264人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いらお(プロフ) - お皿さん» ありがとうございます、はてなマークに笑っちゃいました（笑）応援とても嬉しいです、頑張ります！ (2023年3月2日 7時) (
レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
いらお(プロフ) - りうっこさん» 返信遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、ストライク取れて光栄です！ゆっくりにはなるかと思いますが、更新した際にはぜひチェックしてやってください…！ (2023年3月2日 7時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
お皿(プロフ) - 陰から応援してる者です...もう、本当に大好きです...ありがとうございます（泣）（？）これからも陰ながら応援させていただきます。頑張ってください!! (2023年3月1日 22時) (レス) @page27 id: 5bd738696b (このIDを非表示/違反報告)
りうっこ - ぶっ刺さりました。ドストライクです… 割と久しぶりの感覚かもです！更新めちゃくちゃ楽しみにしてるので、頑張ってください！！ (2023年2月3日 9時) (レス) @page26 id: 182708b139 (このIDを非表示/違反報告)
いらお(プロフ) - 明日花さん» コメントありがとうございます、すごい嬉しいです！拙い作品ではありますが、明日花さんの性癖に刺さったのでしたら光栄に思います。ゆったり更新してまいりますので、気が向いた時にでもまた本作品を読んでいただければ幸いです！ (2023年1月6日 22時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いらお | 作成日時：2022年12月28日 16時
