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 医務室につくと、特有の薬品臭にAとシャオロンは仲良く顔を顰める。人間も獣人も、どうやら薬品の匂いは気に入らないらしい。包帯とエタノールの混ざった気色悪い匂いに気分を害しながらもシャオロンは口を開く。

 「ペ神!」
 「? ああ、シャオロンかな。どうした?」

 ペ神、と呼ばれた男は医務室の端であるカルテから視線をこちらに寄越し、優しく笑った。キャスター付きの椅子を動かして爪先をこちらに向けると、ちら、とAを見る。
 Aは彼のつけている雑面を見て、どうやって人間の判別をつけているんだろうと甚だ疑問に思いつつも口を紡ぐ。そんな彼女を見兼ねてか、男は言った。

 「お面つけてるのにどうやって見てるのかって?」
 「エッ、ぁ、はい、ちょっと気になっちゃって」
 「はは、まあそりゃあそうやな。これはね、実際君達のことは見えてへんで」

 Aは再度エッと声を上げて目を瞬く。男は続ける。

 「見えへんけど、ただの白い布やから影とかオーラとかでなんとなく誰か分かるんやで。勿論外す時もあるけどな」

 ああ、流石に治療時はずらすから安心してな! と両手を上げて無害をアピールする男。同時に頭の上に生えている耳がピンと伸びた。耳の形的に、犬だろうか。動物の種は詳しくないので詳細は不明だが、明らかに猫や狼ではない。
 兵隊は猫や狼と人間のハーフが多かったので犬はAにとっては新鮮に思えたが、思い返せばシャオロンも犬だったような。


 突如、医務室の向こうの扉で、ガタン、と何かが落ちた音と同時に鈍い音がした。なにか落ちたのだろうか。だだっ広い医務室のその向こうの扉には、黒い文字で「患者棟」と書かれている。ナースコールでも押し違えたか? と思ったが、足音は確実に医務室の方に近づいていて、ついにガタガタとその扉が揺れた。
 その先で何者かが扉を開けようと奮闘しているらしい。ただ鍵がかかっているので、虚しく扉が揺れるだけだった。Aは首を傾げる。

 医者らしき彼は あー、と心底面倒そうに呟くと、大きな声で薬を扱っていたナースに言った。

 「またピッキングされた……。ごめーん、105番の相手してやってー」
 「えっ、105番ですか、私この間行ったら殴られそうになったんですけど」
 「ああ、そうやった。じゃあ男で手が空いてる看護師に105番が絶対医務室に入れないように何とかしてって言っといてくれる?」
 「分かりました」




 

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にのやも(プロフ) - モモモさん» きゃあ! そんなこと言われたら沢山書きたくなっちゃいます!🥹 ご期待に添えるようなるべく余談回挟めるよう頑張ります!🙇🏻‍♀️" (4月5日 8時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
モモモ(プロフ) - 展開が一つ一つ丁寧で面白くてもう全部読みきっちゃいました!3章以内で終わるのか...もっと書いてもいいんですよ🥹(わがまま) (4月4日 21時) (レス) id: 90bb9ca7b2 (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 梓月さん» コメント有難う御座います!🙇🏻‍♀️" 是非命狙われてる夢主ちゃんを守ってあげてください……!👊🏻✨ (4月1日 17時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
梓月(プロフ) - ぐいぐい来られると困っちゃうのあまりにも可愛い…守護らねば (3月31日 21時) (レス) @page42 id: c21b6e797e (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 滅華狂さん» あの場面はとっても慎重に書いたので、そう言って貰えて作者冥利に尽きます!😭✨ これからも更新頑張ります!🙇🏻‍♀️" (3月27日 11時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にのやも | 作成日時:2024年3月24日 17時

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