43.なんつう夢を見たんや ページ1
深い緑の中に、俺は立っていた。
前後左右、足元を見ても、草木が生い茂っている。
ここは森……樹海だろうか。
辺りを見渡していると、目の前にさっきまでなかった筈の道ができていることに気付いた。
暫く進み続けると、やがて今まで見てきた木々とは比べ物にならない大きさの木が見えてきた。
たった1本の大木から差し込む木漏れ日が、薄暗い森を優しく照らし出す。
そしてその大木の麓に、一際明るく光る場所があった。
ただ無心で、足を進める。
近くまで行ってみると、そこに人が立っていることに気が付いた。
後光でよく見えないが、あちらも俺に気付いたようだ。
「あぁ、ゾムさん」
呼んだのは、俺のあだ名。
……なぜ知っているのだろうか。
そして優しく微笑んだかと思うと、彼は一言こう言った。
「君は、このコーヒーの量を────」
「うわああああああああ！！！」
がばっ、とベッドから飛び起きる。
「どうしましたゾムさん！？」
それと同時にショッピくんが来た。
見慣れた猫の姿ではなく、スキンを使った人間の姿だ。
「しょっしょっショッピくん！！は、は、は……！！」
「は……？」
「ハゲが！！！！」
ポカン、と口を開けてその場に立ち尽くす彼。
なんで分かってくれへんのや、こんなに慌ててんのに。
「ハゲがおってん！！でっっっかい木の下に白目のハゲが！！」
「頭に日光が反射して、そこだけ妙に光っとって…」
「しかも、コーヒーって言ってん！！どう見てもそいつが持ってんの紅茶なのに！！！」
一通り考えていることを吐ききり、はぁはぁと息を荒らげる。
少しの沈黙の後、ショッピくんは再び口を開いた。
「気は済みました？」
「な、何がっ…何が言いたいねん」
「……ちょっと待っててくださいね」
そう言って彼は部屋を出ていく。
……ん？部屋？？
疑問に感じ、辺りを見回す。
ここはさっきまでいた森ではなく、俺の部屋。
そして俺が今座っているのも、俺のベッドや。
「…………夢？」
そう言えば俺さっきショッピくんに何て言うとったっけ。
暫く目を瞑り、深呼吸して冷静になる。
───あぁ、バカか俺は。
「お茶持ってきました」
お茶の入った2つのコップを手に再び部屋に入ってきたショッピくん。
半ば放心状態でそれを見つめていると、彼は傍にあった机にコップを置き、俺のベッドの端に座った。
「じゃ、話聞きますよ」
「…………すいませんでした」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハイド - 楽しく読ませていただきました！続き楽しみにしています！ (4月29日 8時) (
レス) @page30 id: 7c83359ee3 (このIDを非表示/違反報告)
カキ - マジあざす (2022年8月28日 11時) (レス) id: d29a1ef807 (このIDを非表示/違反報告)
れーれーれー - いつも読まさせていただいています！面白いので頑張ってください！……あと、お/り/ふ/ら立ってますよ！(ﾎﾞｿｯ) (2022年8月27日 17時) (レス) id: 1e793d26dd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カキ x他1人 | 作成日時：2022年8月27日 16時
