57.皆のアイドル ページ15
樹海が完全に見えなくなってすぐ、今度は前方に巨大な城が見えてきた。
都市部に囲まれた一際荘厳な雰囲気を感じさせるその建造物は、ここがショッピくんや大先生の言っていた「職場」なのだと一目で分かった。
「はい、着いたで。ここだけは一目見といてほしくてさ」
下ろされたのは、城の一番高い位置にある展望台。
こんな所にたった3分で着いてしまうとは。俺の登下校時の送り迎えに是非とも来てほしい。
辺り一体の景色を全て見通せてしまうこの場所は、何だか自分がとても凄い人物になったかのような気分にさせた。
「どう？ここ凄い？」
「めっちゃ凄い」
せやろ、とシャオロンが笑う。いつの間にか黄色いオーバーオールを着た人間の姿になっており、胸には黄色い歯車のバッジがきらめいていた。やっぱり幹部やったか。
「ここな、アイツの…俺の友達のお気に入りの場所やねん」
「友達？…その人も幹部なん？」
「うん。…今はおらんけど」
そう言って彼は俯いた。野暮な話をしてしまったかと少し黙っていると、再びシャオロンが口を開く。
「お前とそいつ、すんごい似てて…何となく重ねてまうねん。名前もゾムやし」
ゾム……俺のあだ名と同じ名前。ショッピくんも、彼と同じことを考えてたんやろか。
彼はため息を一つつき、とあるエピソードを語り始めた。
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────
遡ること数百年。ゾムがまだ俺とそれ程親しくなかった時のこと。
「どうも、シャオロンで〜す！みんな見てるぅ〜？？」
俺は昔から目立ったりするのが好きで、街に降りては国民達から黄色い歓声を浴びる、そんな日々を過ごしてた。
俺の種族は黄龍。東洋の一部では人間の信仰対象にもなってる神聖な種族で、人気や知名度が俺にとっての一番のエネルギーやった。
俺は自身の持つ力で国民に加護や運気を与え、国民は俺に信仰というご馳走をくれた。生まれつき影が薄いせいで中々気付いてもらえへん時もあったけど何不自由なかったし、そんな皆が大好きやった。
でもしょっちゅう街に入り浸ってる内に国民達も俺のことを見慣れてきて、前程歓迎はしてくれなくなった。
大空を駆ける龍を見ても、振り向いて歓声をあげることもなくなった。
皆からすれば非日常が日常になった、たったそれだけのこと。でも俺は、そんな皆を見て「無視されてる」、そんな考えに至った。
いつか完全に忘れられるかもしれへん。そう思うと、毎日気が気じゃなかった。
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ハイド - 楽しく読ませていただきました！続き楽しみにしています！ (4月29日 8時) (
レス) @page30 id: 7c83359ee3 (このIDを非表示/違反報告)
カキ - マジあざす (2022年8月28日 11時) (レス) id: d29a1ef807 (このIDを非表示/違反報告)
れーれーれー - いつも読まさせていただいています！面白いので頑張ってください！……あと、お/り/ふ/ら立ってますよ！(ﾎﾞｿｯ) (2022年8月27日 17時) (レス) id: 1e793d26dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カキ x他1人 | 作成日時：2022年8月27日 16時
