58.救いの手 ページ16
自分自身の勝手な思い込みのせいで俺は段々と弱っていき、飛ぶことも難しくなった。
幹部達はそんな俺を沢山励ましてくれた。元々俺が我々国に来たのも昔いた国で同じようなことがあった時にたまたま通りかかったグルッペン…総統が拾ってくれたのが始まりやったから。
でもその頃には俺はすっかり疑心暗鬼になっていた。とうとう自室に閉じ籠って自分の中のエネルギーが朽ち果てるのを待つ…そんな生活を送っていた、ある日。
「シャ…シャ、シャオロン！は、話があんねん！！」
鍵や魔法やらで厳重に施錠していた自室の扉をまるで空気のようにすり抜け、誰かが入ってきた。
どもりまくった声で俺の名前を呼んだのがゾム。今のお前に6,7年歳をとらせたような見た目の奴や。
その時は幹部の中じゃ全くと言っていい程個人的な間柄なんかなくて、ただの人見知りな奴…そんなイメージしかなかった。
それに、ゾムは幹部で唯一本体がどっからどう見ても人間の姿やったから、今一番会いたくない奴でもあった。俺はすぐに追い出そうとしたけど、あいつはそれを無視して俺の体に触れた。
すると突然怠さや不安、悲しみとか、俺を蝕んでいたモノが体からすぅっと抜けていく感覚がして、どこか解放されたような気分になった。
一体何をしたのか。それを言うより速くゾムは俺を外に連れ出し、空を飛んで国を出た。
着いたのは俺が元いた東洋のとある国。見た目は昔と全然違ったけど、確かに懐かしさを感じた。
しばらく国を2人で観光し、龍の姿に戻って街の上を一緒に飛び回ったりもした。
「なあなあ、みーんなシャオロンのこと見てんで」
皆が俺を見て、微笑んで、手を振ってくれた。
すっかり元気になって我々国に帰る時、隣を飛ぶアイツの表情はその時の俺の気分と同じくらい満ち足りていた。
「シャオロンは人気者やで」
「これまでも、これからも………多分！」
「多分は余計やアホ！」
────────
────
「……そんなわけで、アイツには結構感謝してんねん。実質命の恩人みたいなもんやし」
どうせ弄られるだけやから本人に言うつもりはないけど、と付け足すシャオロン。
「お前はゾムと顔似とるし、伝えた気になれるかなって思って」
「…いや俺に言われても」
そっくりとはいえ赤の他人やし、流石に無理な話や。
そんな意味を込めて言葉を返すと、シャオロンは笑いと別のナニカが入り交じったような複雑な表情を浮かべた。
…今の笑うとこやと思うけど。
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ハイド - 楽しく読ませていただきました！続き楽しみにしています！ (4月29日 8時) (
レス) @page30 id: 7c83359ee3 (このIDを非表示/違反報告)
カキ - マジあざす (2022年8月28日 11時) (レス) id: d29a1ef807 (このIDを非表示/違反報告)
れーれーれー - いつも読まさせていただいています！面白いので頑張ってください！……あと、お/り/ふ/ら立ってますよ！(ﾎﾞｿｯ) (2022年8月27日 17時) (レス) id: 1e793d26dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カキ x他1人 | 作成日時：2022年8月27日 16時
